業界で働く人なら、一度は耳にしたことがあるかもしれませんが、IT業界には「エンジニア(プログラマ)35歳定年説」というものが存在します。
「仕事としてコードを書くことは、35歳を超えても続けるのは難しい」と言われていました。
IT業界は比較的若い産業で平均年齢も低いですが、それにしても「35歳で定年」と言われてしまうのは、業界を知らない人からは不思議に思われてしまうかもしれません。
今回は「エンジニア35歳定年説」がなぜ生まれたのか、それは現実に即しているのかを考えていきたいと思います。
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エンジニア35歳定年説が生まれた3つの理由
エンジニア35歳定年説の主な理由は以下の3つです。
- 管理職にならないと給料が上がらない
- 肉体的な体力の限界
- 技術の進化についていけなくなる
管理職にならないと給料があがらない
優秀な技術者(もちろんプログラマー)を採用しようとした某企業。応募してきた若手技術者に「年収800万円以上なら就職してもよい」と言われ、面接官の課長は「私の給与よりはるかに高い」と怒ったそうだ。でも米国企業では技術者が1000万円近くで、現場のマネジャーが500万円なんて当たり前のこと。
— 木村岳史(東葛人) (@toukatsujin) 2019年2月6日
IT産業の黎明期では「設計やマネジメントなどの上流工程こそが価値がある仕事で、プログラムを書くという仕事は新人や下請けの仕事」という風潮がありました。
特に大規模なシステムの受託開発をメインに行うSIer業界では、Excelで設計書を書いてプログラムの製造は外部の会社に安く丸投げ、上がってきた納品物の検品だけを行う会社というのがザラにありました。(そしてこういう会社がやけに給料が高かったりします)
こういった会社では、年次が上がれば上がるほどプロジェクトの管理がメインの仕事になるため、エンジニアとしてコードを書き続けるのは難しくなります。
そもそも、「管理職にならないというキャリアパスが用意されていない」場合が多いです。
もちろん、出世も昇給も諦めてしまえば、一人のプログラマとしてソースコードを書き続けて生きていく方法はあったかもしれません。
しかし、そこまで腹を括れる人も少数派。
年齢が上がると家庭の事情や人付き合いなどで必要になってくるお金も増えてくるものです。
こういった環境のなかで、ほとんどの人がエンジニアとしての仕事を諦め、管理職になることを受け入れます。
肉体的な体力の低下
特にいまWeb系の会社で働いている人には信じられない話かもしれませんが、かつてはIT業界は徹夜が当たり前の業界でした。
今はいわゆる「ブラック企業」への世間の風当たりが強くなっているのである程度は改善されたかと思いますが、まだまだその風潮が残っている会社は多いです。
特に大規模なシステムの受託開発では、納期が最初に決まっていて、プロジェクトの進捗が遅れているようなら昼夜問わず働き続けなければなりません。
大変不名誉なことですが、
- キツイ
- 帰れない
- 給料安い
の頭の3つの「K」を取って、「3K業界」と言われてしまうこともありました。
そもそもシステムの設計、コーディングという作業は非常に思考力・集中力を伴うものですが、炎上しているプロジェクトに参画してしまうと休む時間もないのでそもそも集中力がキープできません。
結果としてますます進捗が遅れてしまう、という悪循環に陥ってしまうわけです。
結局の所「炎上しているプロジェクトで長時間労働をしても生き残っていける体力・精神力がある」若い人しか続けられる仕事ではなくなってしまっていたのです。
「ブラック会社に勤めてるんだが、もう俺は限界かもしれない」というタイトルで2008年に話題になり、映画にまでなった作品があります。
これもまたIT業界が舞台になっています。
新しいスキルを学び続けることができなくなる
プログラミング関連のテクノロジーは日々飛躍的なスピードで成長しています。
そのため、エンジニアという職業で価値を発揮し続けるためには、新しいスキルを常にキャッチアップすることが求められます。
ところが、社会人として働いていると、「今勉強しない理由」というのはいくらでも降ってくるものです。
今日は仕事がきつかったし上司との飲み会があった。
明日は恋人とのデート。
ああ、家族サービスもしなきゃ。
来月から新しいプロジェクトで稼働が増えるらしい。今のうちに遊んでおきたい。
なんだか今日は体調悪いしやる気が起きない。まぁ明日からやればいいや。
っていうかそもそも給料上がらないのに、自分の時間を割いて勉強する意味がわからない。
しかし、テクノロジーの進化はそういった個人の事情を一切考慮してくれません。
そしていつのまにか技術の進化に追いつけなくなり、現場で通用しなくなってしまうのです。
35歳定年説の前提が崩れ始めている
コードがかけるスペシャリストの市場価値が上がった
従来のIT業界では、「馬車馬のように働くこと」、そして「プログラムを書くことは安い下請けに任せ、自分は設計・管理に徹すること」が揺らぐことのない価値であったのは前述した通りです。
しかし、時代は変わってきています。
実際に手を動かし、すばやくサービスの構想を実現できる人の市場価値があがってきています。
スタートアップやベンチャー企業では、Excelの上での設計ができてもプロダクトを実現できない人は相手にされません。
また、大規模な事業会社であってもIT投資を積極的に行い、自社のシステムを内製するために優秀なエンジニアを囲い込むなどの動きが見られます。
ようやく、「一生現場でコードを書き続けて、それが経済的にも報われる」時代が到来したのです。
雇用がより流動的になり、労働環境が整備された
IT業界だけでなく、多くの業界でテクノロジー利用が推進され、優秀なエンジニアに対する需要が高まるにつれて、より働きやすい環境が作られてきています。
勤務時間を調整できるフレックスタイム制や、オフィス外で働けるリモートワークや在宅勤務など、ライフステージに合わせた働き方を実現できる会社も増えています。
また、転職サイトやエージェントなどが普及してきて、スキルのあるエンジニアであれば「辞めてもすぐ次が見つかる売り手市場」になってきています。
転職に関する情報が少なかったかつては経営サイドも「正社員を辞めても行き先がないだろう(だから労働環境の改善は必要ない)」と強気に出ることもできたのですが、もはや通用しません。
そういった情報はすぐに拡散され、新しい技術者が採用できなくなってしまうからです。
長時間労働で締め切りに追われて働かなければならない、おまけに歳を取るとエンジニアを辞めさせられる、そんな昔のイメージとは全く違った環境になっています。
とはいえ、働く会社をしっかり見極めるべき
ここまで、現代のエンジニアの労働環境が劇的に改善されてきていることを述べました。
それではエンジニア35歳定年説は、完全に過去のものになってしまったのでしょうか?
実際には、(改善はされているものの)依然として「35歳定年説」を地で行くようなIT企業がいまだ存在することに注意する必要があります。
どこでもいいからとりあえず良さげなところに転職すればOK、ではないので、しっかり会社の環境や文化を見極めることが重要です。
仕事の情報を集めよう、おすすめ転職サービス3選
「どの会社に優秀なエンジニアが集まっているのか?」「どういった会社でホワイトは働き方ができるのか?」の情報を集めるには、実際に転職サイトに登録して自分の目で確認することが一番です。
登録するのに料金は一切かからず、多数の求人情報を見ることができるので、自分のマッチした会社はどこなのかをしっかり考えて行動いくことが良いキャリアを築いていくポイントです。
ここではおすすめの転職サービスを3社ほど紹介します。
ワークポート
ワークポートはIT業界、特にWeb系に強い転職エージェントです。
15000件以上の求人情報を持っており、また転職のプロによるサポートも受けられます。
TechStars
TechStarsはITエンジニアに特化した転職サービスです。
登録するだけで企業からの「会いたい」が届くのが最大の特徴です。
プロフィールを充実させておくとマッチング精度もあがるため、「転職したいけど今の会社の稼働が多すぎて時間がない…」という方にもおすすめできるサービスです。
マイナビジョブ20′
マイナビジョブ20’s(トゥエンティーズ)は、20代に特化した転職エージェントです。
20代の転職市場を熟知したキャリアアドバイザーが、丁寧に一人ひとりの転職をサポートしてくれます。
まとめ
- エンジニア35歳限界説はだいぶ廃れてきた
- コードを書けることの市場価値は上がってきている
- 当時の価値観が根強く残っている会社もあるので、会社選びは気を抜かずに