基本情報技術者試験は学生から社会人まで幅広い層が受験する、エンジニアの登竜門的な資格として位置づけられています。
この資格を取っていると技術者として一定の実力を持っていると評価されやすく、企業によっては資格手当で給料がアップするところもあります。
基本情報技術者試験の目的は以下のようになっています。
- 1.情報処理技術者に目標を示し、刺激を与えることによって、その技術の向上に資すること。
- 2.情報処理技術者として備えるべき能力についての水準を示すことにより、学校教育、職業教育、企業内教育等における教育の水準の確保に資すること。
- 3.情報技術を利用する企業、官庁などが情報処理技術者の採用を行う際に役立つよう客観的な評価の尺度を提供し、これを通じて情報処理技術者の社会的地位の確立を図ること。 (引用: IPA 独立行政法人 情報処理推進機構:情報処理技術者試験:試験の概要)
似たような位置づけの資格としては「ITパスポート」が挙げられますが、こちらはITに関わるすべての方を対象とした試験で社会人として必須となる「IT知識のチュートリアル的な資格」であって、難易度も基本情報技術者より若干低いです。
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基本情報技術者の合格難易度は?
インターネット上では「簡単」「これをわざわざ勉強するようなやつはエンジニア向いていない」「朝起きるかどうかを試される試験」などと言われています。
まずは以下のグラフを見てみましょう。現行の試験制度となった平成21年以降の推移です。
年度 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 |
---|---|---|---|
平成21年春期 | 65,407人 | 17,685人 | 27.4% |
平成21年秋期 | 79,829人 | 28,270人 | 35.4% |
平成22年春期 | 65,407人 | 14,489人 | 22.2% |
平成22年秋期 | 73,242人 | 17,129人 | 23.4% |
平成23年春期 | 58,993人 | 14,579人 | 24.7% |
平成23年秋期 | 59,505人 | 15,569人 | 26.2% |
平成24年春期 | 52,582人 | 12,437人 | 23.7% |
平成24年秋期 | 58,905人 | 15,987人 | 27.1% |
平成25年春期 | 46,416人 | 10,674人 | 23.0% |
平成25年秋期 | 55,426人 | 12,274人 | 22.1% |
平成26年春期 | 46,005人 | 11,003人 | 23.9% |
平成26年秋期 | 54,874人 | 12,950人 | 23.6% |
平成27年春期 | 46,874人 | 12,174人 | 26.0% |
平成27年秋期 | 54,347人 | 13,935人 | 25.6% |
平成28年春期 | 44,184人 | 13,418人 | 30.4% |
平成28年秋期 | 55,815人 | 13,173人 | 23.6% |
平成29年春期 | 48,875人 | 10,975人 | 22.5% |
平成29年秋期 | 56,377人 | 12,313人 | 21.8% |
平成30年春期 | 51,377人 | 14,829人 | 28.9% |
平成30年秋期 | 60,004人 | 13,723人 | 22.9% |
このグラフから読み取るに、現実には合格率は2割〜3割と非常に低くなっています。
実際に申し込みをしてから受験する人が7割程度だとしても、半分以上は試験に落ちている計算になります。
油断していると簡単に足をすくわれる難易度なので、しっかり対策していくことが重要です。
基本情報技術者の試験内容
基本情報技術者試験は春と秋の2回全国で実施され、午前試験と午後試験に分かれています。
合格するためには、午前試験・午後試験両方で6割以上正答する必要があります。
午前試験
午前試験では、4択の選択式問題が80問出題されます。
テクノロジ系が問1~50までで計50問、マネジメント系が問51~60で計10問、ストラテジ系が問61~80までの20問で合計80問構成の試験です。
情報処理技術者のための試験なのでテクノロジ系の問題比率は多めですが、合格ラインを安全にクリアするためにはマネジメント・ストラテジの問題でも一定数正解できるようになっておいたほうがよいでしょう。
マネジメント・ストラテジを軽視して午前でまさかの不合格になる、というのは現場で実務経験を積んできている人も陥りやすいパターンです。
午前問題では、過去の出題と似たような問題が多く出題される傾向にあるので、過去問演習を積み重ねると効率よく得点を上げることができます。
時間区分 | 午前 |
---|---|
注意事項の説明開始時刻 | 9:15 |
試験時間 | 9:30 ~ 11:00 (150分) |
問題数 | 80問 |
回答形式 | 4つの選択肢から選択するマークシート |
午後の難しさに引っ張られ、午前の対策をおろそかにする人が多いですが、先程も述べたと落ち、合格には午前で60点以上、午後でも60点以上であることが必要です。
午後試験
午後試験では、大問が13題用意され、必須のものと選択のものを回答していく方式になります。
午後問題も選択形式の問題となりますが、長文記述をしっかり読解する必要があり、情報処理力や読解力も重要ですので、過去問の繰り返しで慣れておきましょう。
情報セキュリティが設問1(回答必須), アルゴリズムが設問8(回答必須)なのでこれらの対策は必ず行うようにしてください。
設問2~7は、データベースやハードウェア等だけでなくプロジェクトマネジメントやシステム戦略なども選択することができます。
勉強する段階で「自分はどの選択問題をやっていくのか?」を決めて集中して学習すると効率的です。
一見難しそうに見えても、データベースやネットワークなど「テクノロジ系」の問題を選択するほうが実は難易度が低いです。午後のマネジメントやストラテジ系の選択問題は難易度が難しい傾向にあります。
設問9~13では、C, COBOL, Java, アセンブラ, 表計算からどれか1つを選択して回答します。
こちらはシンプルに、自分の勉強したい言語を選ぶのが良いですね。
時間区分 | 午後 |
---|---|
注意事項の説明開始時刻 | 12:45 |
試験時間 | 13:00 ~ 15:30 (150分) |
問題数 | 設問1必須、設問2~7から4つを選択、設問8必須、設問9~13から1問選択 |
回答形式 | 4つの選択肢から選択するマークシート |
基本情報技術者の受験料
2018年現在、基本情報技術者試験の受験料は5700円(税込)となっています。
受験料は変更されることがあるので、必ずIPA公式サイトから詳細を確認するようにしてください。
基本情報技術者試験は有効期限がなく、一度取得したら更新の必要はありません。
ベンダー系の資格のほとんどが有効期限があり、更新の手間がかかることを考えるとかなりコスパの良い国家資格といえます。
基本情報技術者の試験対策
過去問は公式が無料配布中
IPAの公式サイトから過去問とその解答を入手することができます。
IPA 独立行政法人 情報処理推進機構:問題冊子・配点割合・解答例・採点講評(2018、平成30年)
おすすめの勉強法
参考書を一冊買って軽く流し読みしたら、過去問に挑戦してみて、わからなかったところを参考書に戻って確認する。
これを繰り返すのがおすすめの勉強法です。
参考書を何冊も買ってしまう人がよくいますが、一冊をやり込めば十分合格可能ですし、そちらのほうが効率的です。
また、基本情報技術者試験で出題される問題、特に午前問題はパターン化されていて、毎年似たような問題が出るので過去問を繰り返し解くと効率的に学習することができます。
オススメはしませんが、過去の問題とその回答を丸暗記だけでも得点を稼げたりもします。
午後問題に関しても全く同じ問題は出ないとはいえ、問題の雰囲気を身体でつかむことができるので、過去問学習は非常に効果があるといえます。
なので、早めの段階から過去問を繰り返し解いていくことを推奨します。
上段で述べた、IPAの無料過去問を使うのも良いですが、解答に対する解説がないのが欠点です。
問題に対する解説が豊富なものを選びたいなら、市販の過去問を購入するのもアリです。
基本情報技術者過去問道場では、オンラインで過去問を解くこともできます。
基本情報技術者の参考書
基本情報技術者試験対策の王道かつ最もおすすめできるのが、この「栢木先生の基本情報技術者教室」です。
IPA公式の基本書はやや「お堅い」感じの解説で、初心者にはとっつきにくいかと思います。
栢木先生の基本情報技術者教室では、イラストや図解・例え話などが豊富に使われていて、「コンピュータの内部の仕組みとか全然わからない!」人でもわかりやすいような構成になっています。
内容に関連した、なごみイラストで頭をほぐしてからスタート。各節を短めに構成し、細切れ時間を有効活用できる。広い範囲から試験に出るところだけを解説。例え話でイメージしやすい。役立つ囲み記事もたくさん。「AとくればB」方式で重要ポイントをひとまとめ。頭の整理がしやすい。覚えた知識をすぐ使うから、記憶が定着しやすく応用力がつく。最新の試験問題も多数収録。
基本情報技術者資格を取るメリット
あなたが就職している会社が資格手当制度を持っているのであれば、おそらくこの基本情報技術者を取っておけば資格手当が出され、月給が数万アップすることでしょう。
IT業界は業務独占資格というものがありません。基本情報を持っていない人でもプログラミングや設計を行うことはできます。
しかし、IPAのある程度の標準問題を解ける能力があるエンジニアとして、やはり評価の期待値は高くなるのではないでしょうか。
あとは実務で力を見せつけるだけです。
まとめ
- 基本情報情報技術者はエンジニアへの登竜門的資格。
- 失効せず受験料も安いが、巷で言われているほど簡単ではない
- 試験対策は参考書を横に過去問を繰り返し解くのが王道
- 合格後は資格手当があれば月給アップ。なくてもスキルの下地にできる