エンジニアをこれから目指す人は、大企業とベンチャーのどちらを選ぶべきなのでしょうか?大企業には大企業の、ベンチャーにはベンチャーのメリット・デメリットが存在します。
今回は、大企業にポイントをあてて、そのメリット・デメリットについて考察していくことにします。
もちろんこのメリット・デメリットに当てはまらない大企業もありますが、まずは傾向としてこのような傾向にある、ということを理解していただければ、会社選びをするときの大まかな指針として使えると考えています。
Contents
大企業のメリット
大規模なサービスを開発・運用するスキルを習得できる
エンジニアが大企業に就職するメリットとして、「多くのユーザーが使っているサービスの開発にコミットできる」というものがあります。
100人に使われるサービスと、10万人に使われるサービスではパフォーマンスや品質に関する意識は違ってきますし、エンジニアとしての経験値も当然違ったものになってきます。
国際的な規模でのサービス開発をしている会社もありますので、そういった場合はエンジニアリングスキルの他に語学やマネジメント、コミュニケーション面での成長も期待できます。
スタートアップのプロダクトでは、まだユーザーが十分についておらず、スキルのないエンジニアでも仕事を(ごまかしながら)こなせてしまう場合もあります。そのまま事業自体がうまくいかずサービス自体がクローズ…となってしまうケースもあります。
体系化された研修が受けられ、安定したスキルアップが得られる
大企業では人的リソースがベンチャーや中小企業に比べて充実していますので、採用した人を無理して現場に投入しなくても良い仕組みになっています。
大企業の育成方針としては、即戦力よりも3~5年後に大きく成長してくれるような人を育てたい、と考えています。即戦力はキャリアを積んだ中途を採用してくれば良いですし、長い目線での育成はベンチャーや中小企業との差別化要因にもなりえます。
特に業務から一旦離れて、研修のプロフェッショナルから体系的に業務知識を習得する機会は、ベンチャー企業ではなかなか無いと思います。ベンチャー企業の場合だとどうしても「即戦力」を求められる傾向にあり、スキルアップは自分の責任で各々やってください、ということになってしまいがちです。
また、「この役職に就くためには、どのようなスキルを身につければよいのか?」の指針が可視化されていることもあります。何を頑張れば報われるのかが明確であることで、成長に対するモチベーションを維持することができます。
給料が高く安定している
本来なら一番最初に説明すべき、「誰でも知ってる大企業のメリット」ですが、エンジニア視点だと技術やスキルアップのほうが関心が高いと思うので三番目にこの項目を持ってきました。
終身雇用は崩壊した、大企業神話が崩れ去ったと色々な方が声高に主張していますが、現在でもベンチャー・中小企業や個人事業主より圧倒的に安定していますし、社会的信頼も厚いのです。
基本給・残業代だけではなく、例えばボーナス、家族手当、出張手当、社宅などが入ってくるので手元に残るお金は非常に多いです。
前段で述べた教育体制とも関連してきますが、外部の資格取得に対して補助金が出たり、資格手当が出たり、大規模なカンファレンスの参加費・交通費が出るような仕組みもあります。
金を稼ぐのは決して悪いことではありません。安定した環境で余裕を持ちながら自分の技術を追求できると、「いま必要な技術」だけでなく「将来伸びてきそうな技術」にも目が向くようになり、可能性が広がります。
勤務体系が整備されている
大企業のほうが勤務体系が整備されており、パワハラやサービス残業というのは比較的少ない傾向にあります。
特に株式の上場を目指している企業であったりとか、すでに上場している企業は、上場基準に「労働基準法を適切に守れる体制ができているか?」が含まれているため、会社の価値を維持するためにも労働基準法を遵守する必要があります。
多くの大企業には労働組合もあり、企業と交渉してベースアップ(基本給の昇給)や、ボーナスの交渉、労働環境の改善などに協力してもらえます。
一方、ベンチャー企業だと労働組合が存在していない事も多く、労働環境などに不満があった場合は経営陣と直接交渉しなければなりません。「急成長」のみを仕事の目的としているベンチャーでは、そういった交渉は難航するかもしれません。。。
知名度を生かして転職活動を有利に行える
言いにくいのですが、転職サイトや転職エージェントを使っての転職活動では、本人の実力も考慮されますが、前年の年収やどの組織にいたかというウェイトが大きくなってしまうのが現実です。学歴主義もとい、職歴主義といった感じですかね。
「会社のネームバリューや現年収など見ずに100%自分の実力を評価してほしい」という気持ちはわかります。
しかし、日本では雇用の流動性が高くない(転職が一般的ではない)ので、人のスキルを見極めるノウハウが溜まっていません。なので、どうしても職務経歴書や前職どこにいたかなどで判断せざるを得なくなってしまうんですよね。
スタートアップやベンチャーの幹部として大企業出身者が(ときには生え抜きで創業からコミットしてきたメンバーを差し置いて)横から入ってくる、というのもよく見られる光景です。
大きな時代の流れとしては雇用の流動性は確実に高まってきていますし、これからはより一層「その人自身を見極めよう」という動きは拡大してくると思いますが、現状として「大企業からの転職のほうが有利」というのは認めざるを得ない事実です。
・大規模サービス開発で技術向上
・研修・教育制度による体系的なスキル習得
・安定した給与・労働環境
・知名度を生かして転職の可能性アップ
大企業のデメリット
古い技術や開発プロセスを採用している場合がある
5年、10年と運用してきているシステムの保守・運用現場に配属された場合、どうしても古いプログラミング言語や古いバージョンのフレームワーク、保守的な開発プロセスになってしまいがちです。
例えば金融系のプロジェクトだとCOBOL,Java以外のプログラミング言語が採用されているところはほとんどないのではないでしょうか。最近では金融系がガワだけ変えて「FinTech」と自称している場合もあるので、求人を見るときには十分注意していただきたいです。
事業上やむを得ない事情がある場合もありますが、古い技術というのは「その会社でしか使えないスキル」になりがちで、キャッチアップするモチベーションも上がりにくいですよね。
もしこういった「レガシーな」現場に当たってしまったら、ある程度社内で信頼を積んでから、新規事業の立ち上げチームなどへの異動を願い出てみると良いでしょう。退職せずともまずは異動というカードが切れるのが大企業のいいところです。
年功序列型の給与体系になっており、実力が給与に反映されにくい
大企業の給与体系は原則的に年功序列です。(多少能力が加味されることはありますが。。。)
日本の雇用制度では、一度正社員として雇用してしまったら原則として解雇することはできません。それだけでなく、一度基本給を上げてしまったら減給も認められないケースが多いです。
この労働慣習に従おうとすれば、一度目覚ましい成果を上げたからといってその人の給料を軽々しく上げるわけにはいかないのです。その人が次の年成果を出せなかった場合、給料を減らせないですしクビにもできないからです。
会社側も一定の成果を出す人には長くいて欲しいと思っているので、定期的に昇給はさせていくんですが、入社年次が上の人を実力だけで追い抜くというのが難しい構造にあります。
副業が認められない場合がある
近年、「働き方改革」という概念が注目を集めており、ベンチャー企業や中小企業では副業や週末起業などを認めているところが多くなってきています。個人で仕事を取る・こなす体験は非常に得られるものが多いと思いますし、個人的にはもっとこの働き方が広まっていってほしいと思っています。
しかし大企業ではコンプライアンスや個人情報保護の観点から、まだまだ副業を認めるのが一般的とは言い難い状況です。
「一ヶ月の労働時間は、2つ以上の会社に勤めている場合合算して計算されるべき」という主張もあり、労働基準法を遵守しようとすると副業を認めるのはリスクが高くなってしまうので、一律で副業を禁止して安全側にたおそう、というわけです。
また、大企業ではビジネス上クリティカルな情報を取り扱う場合もあるので、管理できない副業を認めてしまうことはリスクが高い、という判断になってしまいます。
スーツ着用、勤務時間が厳格な場合も
特に業務システムを受託開発しているシステムインテグレーターなどはスーツ着用、出勤時間が厳密に定められている会社が多い傾向にあります。
エンジニアになりたい人の中には「満員電車もういやだ」「8:30なんて起きられない」という人もたくさんいるかと思いますが、大企業だと残念ながらそういった要求をかなえることは難しいかもしれません。
例外として大企業というくくりの中でも、Web系の企業文化を色濃く受け継いでいる大企業では私服・フレックスが浸透しているケースもあります。
満員電車を回避するにはたとえ家賃が多めにかかったとしても職場の近くに引っ越すという戦略もあるのですが…本記事の趣旨とはズレるので機会があればまた別の記事にでも書きます。
・古い技術、開発スタイル
・年功序列
・副業禁止の会社が多い
・スーツ着用、服務規程も厳格
大企業にはこんな人がオススメ
- デカいサービスをやりたい!
- やっぱり安定しているほうがいい
- アウトプットよりインプットのほうが得意
- 満員電車や朝の出勤が苦にならない
- ネームバリューを活かして数年後転職・独立したい
こういった志向を持っている人にとっては、大企業でエンジニアになるのが適したキャリアプランなのではないでしょうか。
大企業はこうしてみると入るメリットも多く、デメリットが苦にならないのならとりあえず入ってみるという選択もよいのではないかと思います。